行政書士試験に合格後、すぐに開業することに不安を感じる方は少なくないでしょう。
行政書士として40代で開業し、8年目を迎える筆者が、なぜいきなり開業という道を選んだのか、そして開業から軌道に乗せるまでに経験したこと、重要だと感じたことについて語っています。
開業を考えている方や、独立後のキャリアに興味がある方にとって、具体的なヒントや気づきが得られる内容です。
行政書士としていきなり開業した理由
当時勤めていた会社は、規模の大きな会社でしたが、先が見えていました。自分の仕事がなくなる可能性も予想されたため、独立開業できる行政書士という資格に強い興味を持ち、迷わず勉強を開始しました。
幸運にも試験に合格しましたが、やはりいきなりの開業には悩みました。行政書士が何をしているのかもよくわからず、開業するために何をすれば良いのかも、わからないことだらけだったからです。
色々調べてみたところ、行政書士事務所に雇ってもらうのは難しいようでした。しかし、行政書士の仕事について調べれば調べるほど、面白そうだという気持ちが募っていきました。
そんな時、偶然にも事務所物件を見つけました。その物件がとても気に入り、そのまま開業という流れになりました。
行政書士の雇用と仕事の魅力
行政書士の雇用についてですが、事務所によっては雇用形態はありますが、40代、50代の人が雇ってもらうのは難しいと感じました。
行政書士を雇う側は30代、40代の人が多いため、年下を雇いたいと考えるだろうと想像しました。また、実務を教えてもらう場ではないということも分かりました。
せっかく雇っても実務を覚えたところで独立されてしまっては、というのが本音のようです。業務の一部しか経験できないところもあるらしく、業務のノウハウは漏らさないのが一般的だそうです。
行政書士の仕事については何も分からなかったので、とにかくたくさんの行政書士に会ってお話を聞きました。ブログも読み漁りました。
その結果、業務の幅が広くて面白そうだと、行政書士の業務にとても興味を持ちました。行政書士の業務は、色々なものと組み合わせることで可能性が広がるだろうと感じました。
独立して良かったという話もたくさん聞きました。行政書士は「食えない資格」と聞いていましたが、軌道に乗っている人は本当にたくさんいるのだとその時に感じました。行政書士という仕事に対して、私の中で夢がどんどん広がっていきました。
事務所物件との出会い
そんな中で、事務所物件と出会いました。ゴールデンウィークにふらっと見学に行きました。
休みだし、ちょっと見てみようかなという気持ちで入ったのですが、その物件はスケルトンで、自分の好きなようにリノベーションできるということに、また夢が膨らんでしまいました。
立地もとても良く、自宅にも近かったので、ここだったら毎日通いたいと思いました。自分が毎日通いたいところには、人も集まってくれるのではないかと思ったのです。この事務所物件との出会いは、私の開業を決める大きなポイントとなりました。
開業後の現実と軌道に乗せるまで
開業した結果、1年目、2年目はとにかく大変でした。想定内とはいえ、やはりきつかったです。
中には「なにこれ」と感じる同業者もいましたし、きついなと感じる他士業の方と出会うこともありました。その中で、資金はどんどん消えていきました。開業資金はしっかりと準備したはずでしたが、やはりお金がどんどん消えていくのは心もとないものです。
また、知り合いには期待しないことをお伝えしておきます。人脈は開業後に作るものだと思います。開業したら、自分を知ってもらう活動をすることがおすすめです。
ブログやホームページ、SNSをフル活用してください。本当に1年目、2年目は大変ですが、その大変な中でしっかりと人脈や実績を作っていくことで、3年目に軌道に乗せることができます。
私もなんとか3年目に軌道に乗せることができました。やっと黒字になりました。そのことで、これまでの赤字が繰越損益という形で税務上でも活かせるようになりました。1年目の活動がようやく芽を出したという気持ちになりました。
このため、1年目、2年目の動き方というのはとても重要です。
この時にどう動いたかによって、3年目にどう軌道に乗るかということにつながってきます。
私の場合は、1年目から継続型収入に力を入れました。継続型収入とは、顧問料などの毎月定額で入ってくる収入のことです。
行政書士は単発の仕事が多いので、なかなか売上が安定しないと言われています。税理士さんや弁護士さん、社労士さんは顧問料があるから毎月の売上が安定しているわけです。
だったら行政書士も顧問料などの毎月定額で入る収入を作れば売上が安定すると考え、ここを重視して1年目の活動をしていきました。
目標としては、売上全体の3割から4割をこの継続型収入にしようと考えました。これによって売上が安定するようになりました。継続型収入につながる業務を選んでいくのも重要だと私は考えています。
開業のメリットと向いている人
会社勤めでは手に入らない時間を手に入れることもできました。主体的に生きていきたいと考えている人にはおすすめです。また、一人で自由に仕事をしたいという人にもおすすめです。自由に時間が使えるので、私としては今最高という状況です。
開業すると、収入アップも自分次第でできるようになります。お金を稼ぎたいという人には、お給料をアップするよりも、自分自身で売上アップを目指した方が可能性が高いと思います。
また、そんなに稼ぎたいわけではなく、適度に稼ぎたい人にもこの開業はおすすめです。
自分で売上をコントロールできるようになってきますので、働く時間やどれくらい売上を作りたいかによって、動き方を変えていくこともできるでしょう。
私の場合は、自分が開業したことによって家族もやる気になりました。働きたくないという夫がいるのですが、私の行動に感化されたのか、今でも働いています。
自分のお金は自分で稼いでくれるので、私としてもこれはとても良い流れだと感じています。また、ブラック企業で消耗した娘が、スキルや業界を考えながら仕事を選ぶようになりました。これもとても良い流れだと感じています。
最後に、こんな人が開業に向いているだろうというお話をします。
前向きであること: 凹む時は凹むと思いますが、凹んでもまた立ち直れるのが重要です。
孤独に耐えられること: 一人で作業することがとても多くなるためです。
他人の意見に引っ張られないこと: 自分の頭で考えられる人です。
数字で考えるのが好きな人、お金の管理ができる人: 売上から経費を引いたものが利益となります。売上がどれくらいあって、経費をどれくらい使うとどれくらいの利益が残るのか、この辺の管理がしっかりとできることが重要です。
お金の使いどころが分かっている人: 必要な経費もありますから、何でもかんでも出し渋るのではなく、必要なところに思い切り使って、それによって売上を上げて利益を上げていく、こういった考え方ができる人です。
この辺については、開業した後で自分の感覚として養うこともできますので、開業前から身についていなくても大丈夫かもしれません。
家族から応援してもらえていること: これが一番重要だと私は考えています。
家族からの応援がない場合、開業は本当に難しいと思います。これは実質的に何か協力をしてもらうということでなくても、言葉だけの応援でも良いと思います。気持ちだけでも良いと思います。
家族が自分の開業に対して反対はしておらず、協力的な態度というのが、開業を軌道に乗せるためにとても重要な条件です。
開業をしようかどうか迷う時に、自分自身の気持ちを最優先するのは良いのですが、家族が自分の開業についてどう思っているのか、これについても家族としっかり話し合うことをおすすめします。
まとめ
- 行政書士としていきなり開業したのは、勤めていた会社の将来性への不安と、行政書士の仕事の魅力に惹かれたため。
- 開業当初の1年目、2年目は資金面や精神面で大変な時期だったが、継続型収入の確保に注力し、3年目で黒字化を達成。
- 開業によって、時間の自由や収入アップの可能性が広がり、家族にも良い影響があった。
- 開業に向いているのは、前向きで孤独に強く、自分の頭で考え、お金の管理ができ、家族の応援がある人。
- 開業前に、自分がどのような行政書士になりたいのか、何を目標にするのかを明確にすることが、困難を乗り越える力になる。
開業にはそれぞれの背景や理由があると思いますが、自分がどうして開業したいのか、そして開業した後どんな行政書士になりたいのかという気持ちは、開業後に大きく影響してくるのだと感じています。
1年目、2年目と、なかなかうまくいかないのは当然のことなので、その時にくじけたり、へこんだりしても、また立ち直れるように、自分自身がどういう行政書士になりたいのか、何を目標に頑張っていきたいのか、これを開業前にしっかりと考えることをおすすめします。
軌道に乗って前向きに生き生きと仕事をしている行政書士さんにお話を聞くというのも良いでしょう。