行政書士の営業は「誰に届けるか」で決まる!ターゲット顧客特定術

行政書士として独立開業した際、多くの人が直面する課題の一つが「営業」ではないでしょうか。

特に、行政書士の主要業務である許認可業務において、どのようにして顧客を獲得していくのかは、事業の成否を左右する重要な要素です。

この記事では、行政書士が許認可業務で安定的に受注を得るための具体的な営業戦略について掘り下げていきます。単に「営業活動をする」というだけでなく、どのような視点で、どのような準備をして臨むべきか、その本質的な考え方をお伝えします。

受注と納品の重要性

士業の仕事は、基本的にお客様の問題解決です。お客様が抱える不便、不満、不都合、不自由といった「負」を解消したいという時に、専門家を探します。ここに我々がヒットすればいいということです。

大きく分けて必要な工程としては、まず受注、それから納品です。

まずは受注

受注をしてお客様のご依頼を受けたら、しっかりと解決して納品します。どちらも必要なわけです。

多くの人は実務を学びたいということで、この納品の方を学びたいとします。これ大事なことです。納品ができなければそもそもサービスマンというか商売として成り立たないので、商品開発や納品というのは非常に大事ですけれども、受注がないと納品はないわけです。

順番で言えば、どちらが本来大事なのかというと、やっぱり受注がないといけないわけです。

川の流れから考えていったら川上から川下に流れるわけですが、受注が先にあって下に納品があるわけです。ただ残念なことに、この受注は比較的苦手な方が多いです。

理由としては、元々営業活動をやったことがない、受注のプロセスを踏んだことがないという方が大半を占めますし、どちらかというと内向的な方が多い業界でもあるので、営業が得意で士業になるという人は少ないわけです。

だから士業になった人というのは、営業得意な人はほとんどいないという結論になるわけです。

受注が得意な人と苦手な人の違い

では、この受注をどうしていきましょうかというのが今回の話です。さらに行政書士で言うと、やはり許認可が本丸ですから、許認可を受注していくにはどうしたらいいかというテーマでお話していきたいと思います。

まず受注が得意な人とそうでない人の差は、そもそも受注が得意な人は営業活動をちゃんとやっています。受注が苦手という人は営業活動をやっていません。もうここが明らかな差です。

「いやいや、俺だって営業活動やってるよ」という人もいるかもしれません。でも僕からするとそれは営業活動としては足りていないということです。

どういうことかというと、釣りの例えで考えてみましょう。「俺はマグロが釣りたいんだ」そのためにマグロが釣れるような場所を選ぶし、船を選ぶし、マグロ用の釣り竿を選ぶし、リールもそうだし、あらゆる装備をマグロ仕様にしていくわけです。

そしてマグロがいる場所にマグロ用の餌ないしルアーをつけて投げるわけです。これを延々とやるわけです。これは当たり前なことに、そのうち釣れます。

受注が苦手な人というのはどういうことやっているかというと、マグロが釣りたいのか、アジが釣りたいのか、イカが釣りたいのか、タコが釣りたいのかが明確じゃないし、全部釣りたいんですよ。

どれでもいいから釣りたい、とりあえず釣り糸を垂らしてひたすら待っています。

たまたま釣れるかもしれません。そもそもアジ用の竿でマグロなんか釣れるわけないし、マグロ用の竿でアジなんか釣れるわけないわけです。

「なんかよくわかんない、とりあえず竿買ってきて先輩がこの竿がいいって言ってたから買ってきました。忍耐が大事だっつったんで垂らしてみました。待ってました。たまに釣れました」ということを細々とやっているわけです。この差です。

ターゲット顧客の明確化

では具体的にどういうことかというと、例えば許認可といってもいろんな許認可があるわけです。マグロもあればアジもあればイカもあればタコもあれば、どれを釣りたいのか、これが分かっていないと道具もツールもあらゆる準備ができません。

全部釣りたいとやるから、結局それを狙った用意もできなければ、それを狙ったアクションも取ることができないわけです。

具体的に多くの人は「許認可全般お任せください。許認可のプロです」それをひたすら税理士さんと会う、司法書士さんと会う、弁護士さんと会う、社会保険労務士さんと会う、いろんな士業さんに、とりあえずどんどん会っていきます。

「許認可やってます」という名刺交換をします。名刺をたくさん増やして待っているという状態です。もう釣り糸垂らして待っているんですよ。

人によってはこのいろんな他士業さんに会っていく行動を「営業活動僕やってますよ」という人もいますけど、僕からするとそれは営業活動としては足りていないんです。

営業活動というのは、もうマグロ用の竿を持ってきてマグロがいる場所にボンボンボンボン何回も何回も投げて、これが営業活動なわけです。この差です。

ではどうしたらいいかというと、許認可といっても自分は何の許認可を取りたいんですか?自分のお客様は誰なんですか?これです。はっきり答えられますか?

「今日何釣ろうと思っているんですか?」「いや、僕マグロですよ。もうマグロしか見てませんから」という人もいれば、「いや、まあそうですね、うん、まあアジかタコ、そうですね、まあどれか釣れれば」みたいな人もいるわけです。

どちらが受注能力高いかといえば、僕はもうこの許認可のご支援のプロです。お客様はこの人です。これが明確になっている人なんです。

「僕は建設業の許可を専門でやりたいです」だとしたらお客様は建設業の社長、あるいは親方とかです。

全部やりたい人は、例えば飲食店もやりたい、風俗営業もやりたい、ビザもやりたい、建設業もやりたい、と色々やりたいとなったら、あなたの客様は建設業の社長、キャバクラの社長、飲食店の社長、外国人とバラバラです。

自分のお客様が明確に分かっていないから、そもそも営業活動ができません。

もし許認可でしっかり受注していきたい、しっかり営業活動していきたいというのであれば、「何をしたらいいですか?」の前に「あなたのお客様は誰ですか?」これです。

大事なことですからもう1回言いますけど、あなたのお客様は誰なんですか?これをはっきり答えれるようにしてください。

例えば医療の許認可が専門なら、お客様はもう開業医様です。

じゃあ開業医様との接点を持つためにはどうしたらいいんですか?行動していけばいいだけです。

しっかりお客様にフォーカスできるかどうか、お客様にフォーカスできない人はお客様へのアプローチもできません。ここからね、まずは考えてみていただくといいかなと思います。

USP(独自の強み)の確立

では自分のお客様は誰なのか、これを決めていくためには、自分が得意な分野、自分が好きな分野、そして需要がある分野、この3つはしっかり抑えておく必要があります。

自分のお客様とその業界を好きになれなかったら、その仕事はうまくいかないです。お客様を愛せなかったらお客様のご支援なんてできません。

「建設業の社長って苦手だな、なんか怖そうだしな」という人が建設業のご支援できますか?できないですよね。だからまずその業界が好きかどうか、愛しているかどうか、とことん親身になって一緒にやれるかどうか、これはしっかり考える必要があります。

あとは、その業界に対して得意かどうかです。

医療が大好きだし、医療にずっと関わっていきたいという思いがあるわけです。それでいて、開業前にも医療のご支援をする事務所で働かせてもらっていたから、その分野に関しての知識もあるし、能力もスキルもあります。好きだし得意だから向いているということなんです。

最後に需要があることです。

事業というのは当たり前ですけど需要と供給なわけです。需要があって供給があってマッチングして一緒にやっていきましょうという話なわけで、この需要と供給というのは難しいというか面白いことに、時代によって変わるわけです。

成長産業もあれば衰退産業、斜陽産業というのもあるし、これからも成長もしないけどずっと安定して存在するであろうという業界もあるわけです。

さっきの自分の好きなこと、得意なこと、需要があること、これの交わるど真ん中、ここを僕はUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)、独自の強みと呼んでいますけど、ここを狙い撃ちしてここに1点集中して、ひたすらバンバンバンバンバンバンバンバン釣り竿を投げてアプローチをするから、受注というのが永遠と続くわけじゃないですか。

営業スキルとかプレゼンスキルとかコミュニケーション能力とか、当然そういうのはもちろんあった方がいいし、必要なことではあるけれど、それ以前の問題なんです。

マーケティングの原理原則、選択と集中、これもう戦略の基本だから、選択と集中ができていないのは単なる分析不足です。

それと、自分のお客様を特定する覚悟が足りていないだけです。「何でもいいから」の方が勇気はいらないんですよね。

なぜならそこに捨てる勇気が必要ないから。捨てるのも覚悟です。「俺はこの業界、この方を幸せにできれば俺の使命は果たされるんだ」という覚悟ができるかどうかなんです。

地方だから専門特化できないとか、都心だからできるんだとかってことはありません。

ただ闇雲に専門特化すればいいってわけではなくて、好きなこと、得意なこと、需要があることで、特に地方の場合はこの需要というのはしっかり見極める必要はもちろんあると思います。

大事なことだからもう1回言います。「あなたのお客様は誰ですか?」これに皆さん即答できましたか?

即答できたという方は、その方とのアプローチの方法をたくさん作ればいいです。より効果的なものを選択しつつルートをたくさん作っていけば、販売チャネルというのはどんどん増えていきますから。

まずはあなたのお客様は誰なのか、「僕のお客様はまるまるです」と即答できるようにしていっていただけるとよろしいのではないかと思います。

まとめ

  • 行政書士の営業では、まず「受注」が何よりも重要。
  • 受注成功の鍵は、ターゲット顧客を明確にすること。
  • 「釣りたい魚(顧客)」を特定し、そのための準備と行動に集中する。
  • 自分の「好き」「得意」「需要」が重なる分野でUSPを確立する。
  • 「誰を幸せにしたいか」という覚悟が、営業活動の原動力になる。

行政書士として成功するためには、誰に、どのような価値を提供したいのかを明確にすることが不可欠だと、改めて感じました。お客様を深く理解し、その問題解決に真摯に向き合うことが、結果として安定した受注に繋がるのだと思います。